カテゴリ:お話( 5 )
夜のガソリンスタンドで。
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先週のこと。
夜、家族で買い物の帰りにガソリンスタンドに立ち寄った。
オーストラリアのガソリンスタンドは給油機に車を横付けして、自分でホースを使ってガソリンを入れる。
そして、給油機の番号を中の人に伝えてお金を払う。

通り道を占領して停めてあったスポーツカーはピカピカで初心者マークがついていた。
その車のせいでその横の給油機が使えない。
車の主は中にお金を払いに行っている様子で運転席には誰もいない。

その車と顔を合わすように停車して、夫が車から降りてガソリンを入れていた。
私はその車の主がどんな人なのか見たくて、助手席から外を見ていた。
改造された低くて黒い車の主はどんな若者なのか?

向こうの方からアジア人の老紳士が歩いてきてその車に乗り込んだ。
思った感じとはぜんぜん違う人が車に乗り込んだのでちょっと驚いた。
息子の車にガソリンを入れてあげたのだろうか?
その金持ちそうな老紳士に続いて、若い白人の少年が走ってきて運転席のドアを開けた。
父と養子には見えなくはない。けれどもなんだか様子がおかしい。
少年は運転席のドアに肘をかけ、老紳士と会話をしている。
老紳士は車の鍵を差し込みエンジンをかけようとするけれど、鍵が違ったらしく顔の前でいくつかの鍵をガチャガチャさせながら老眼で鍵の確認をしていた。
少年がそれを見ていきなりお腹を抱えて大声で笑い出した。
給油中の夫も同じ光景を見て笑い出した。夫には彼らの会話が聞こえている。

数秒後、私も状況がつかめた。
老紳士は車を間違えていた。
スポーツカーは少年のもので、おじさんが自分の車に乗り込んだのを見て少年は何事かと急いで追いかけてきたらしい。
老紳士は車から降りて、「わしの車も黒いし、この車がわしのリモコンで開いたから。」と言って照れ隠しに少年の前で鍵をゆらゆら揺らした。
そして今降りたばかりのスポーツカーに向かって、やらなきゃいいのに自分のリモコンを押した。
向こうの方で黒いセダンのライトが点滅した。
おじさんは少年の肩を叩いて「ごめん、ごめん。」と謝った。
それから見渡して、自分の黒い高級車に向かって歩いていった。
普通は運転席に座った時点で気がつくだろうに。

少年は笑いが止まらなかった。
一部始終を見ていた私たちと目を合わせ3人でケタケタ笑った。
そして、チャイルドシートに座った坊ちゃんまでも訳が分からず笑い出した。
笑い声って伝染する。
これからしばらくは黒い車を見たら運転手を確認してしまいそう。

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by bon-amulet | 2010-09-19 20:56 | お話
欠かせないもの。
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欠かせないもの。

一日一杯の珈琲。
お弁当を作って、片付けて、お昼を食べて、これから仕事だっていうときに飲む珈琲。
晴れていればテーブルの角に斜めに入ってくる陽射しを見ながら。
手作りのデザートを食べながら。
昨日の事を話しながら。
バルコニーの植物が風に揺れる様子を眺めながら。
小鳥のさえずりを聞きながら。
時々、「仕事なんて行きたくない」とだだをこねながら。

そんなのの全てが、私の毎日に欠かせないもの。
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by bon-amulet | 2007-09-27 14:47 | お話
男と女
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少し前に彼の実家で食卓を囲んで「女の愚痴」について論議をしたことがある。
私が話しているんだから、口を挟まないで最後までちゃんと聞いて欲しいの。と女性軍。
俺は問題を解決してやろうとしてるの。と男性軍。
 
女は話を聞いてもらえれば満足する。
なのに、私の彼も、彼のオトウも、愚痴に対して口をはさみ、解決策を持ち込もうとする。

「こっちは分かってもらえると思って話しているのに、そこでお前のそういう所が良くない、だの
ああいう所がダメだの言われると余計にストレスが溜まる訳。」


「そうそう、そんな事されたら私の行動が否定されているみたいで、気分が悪い」

彼のオカアと私が熱く語っている間に、食卓はきれいに片付けられ、ケーキ用のお皿が出てくる。
もう、ここまで来たら、それは論議ではなくなり、女性軍が相手の不満を言い合っている。
でも時々、私の発言に彼のオトウは「おおおぉ!」と答える。
その言葉、どこかで聞いたぞ、と言わんばかりに。
彼の父⇔彼の母、彼⇔私でまったく同じ会話のやり取りがあったに違いない。

「女としてはさぁ、黙ってフン、フンと頷いていて欲しいわけ。
解決なんて望んでいないの。」


わかった、フン、フンと頷く彼。

それから数日後、何の事については忘れたが、私が彼に「これってどう思う?」と聞く。
私の真後ろに立っている彼は5秒経っても返事をしない。
「ねぇ?」と顔を覗くと
「あのさぁ、これはフン、フンと頷く所? それとも意見を求めているの??」
結局、わかっていないじゃない。(爆)
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by bon-amulet | 2007-05-21 17:17 | お話
バニラアイス
彼女はパートナーと2人暮らし。

例えば、冷凍庫に2リットル入りのアイスクリームがあったとしよう。
ある日の週末、遅いランチの後にちょっと甘いものが食べたくなったとしよう。
こそこそと棚をあさり、そこで、あ、そうだ、アイスがあるんだ、と思い冷凍庫を開けてアイスクリームのコンテナを取り出す。そして、スプーン片手にグリグリとアイスをすくう。
そこで、彼女は彼女が作っていない穴があることに気が付くんです。ついでに、フタについたのをスプーンでなでた跡にも気が付いてしまうんです。彼女、女だからそういう所も気づいちゃうんです。それで、あ、アイツ私に隠れてアイス食べてた、って思うんです。でも食べ終わったらそんな事すっかり忘れちゃうんです。

ある日、彼は小腹が空いて冷蔵庫を開け、あ、そういえばアイスがあるんだ、と思いスプーンを口にくわえて冷凍庫を開け、アイスのコンテナを取り出す。フタを開けて、んんん、なんかこの前より減ってる。あ、アイツ俺に隠れてアイス喰ってた、って思うんです。

しばらくして彼女はキッチンに入り、こういうんです。
「冷凍庫、ちゃんと閉めてっていつも言ってるでしょ!」
そうすると彼はちょっと笑って、こう答えるんです。
「俺じゃねぇ。」

女はこう思うんです。
冷凍庫なんて元々開いてなかったのさ。アイツ、私に隠れてアイス食べてた。
ほぅら、流しにスプーンが一本置いてある。

んで、しばらくソレを繰り返し最後のひとくち残ったら長期戦に突入するんです。
2人とも最後のひとくちは食べたくないから。
一度もオフィシャリーに食べられたことのないアイスはひとくち分残されて冷凍庫でしばらく眠ることになる訳です。
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by bon-amulet | 2007-01-16 16:06 | お話
とまさん
とまさんがウチにやって来たのは去年の暮れの事でした。

ある日、玄関を開けると、とまさんは風に吹かれて立っていました。

「おはようございますっ!、、、ってもう昼過ぎてますよ。随分遅いお目覚めで。
ああ、いいんですよ。夜勤明けなんですよね、聞いてます。ただ、結構長く待ってたもんですからねぇ。ははは。
あ、そうそう、コレ。つまんないものなんですけどね、ウチのやつがよこしたんです。面倒見てもらうのに、さすがに手ぶらってわけにはいかないでしょう?白菜、ネギ、ミント、全部新鮮ですよ。
ここ、結構いいところですよね。高台で。風も気持ちがいいです。バルコニーからの眺めも悪くない。あ、あそこの端、ちょうど良く日が当たってとてもいい。素敵です。気に入りましたよ。
なんだか一気にしゃべったので喉が渇きました。お水を2ℓほどいただけないでしょうか?」

とまさんはペットボトルの水を一気に飲み干してまた、しゃべり始めた。

「ふぅぅう。 美味い水です。ウチやつが言ってただけはある。ボクはしばらくここにお世話になるんですが、全然気を遣わないでくださいね。あなたの邪魔にならない所で、毎日美味い水が2ℓ飲めればボクは幸せです。ウチのが帰ってくるまでの辛抱ですから。」

とまさんは中に入って履物を脱ぎ、バルコニーの端に座って外の景色をもう一度眺めた。

とまさんの正体
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by bon-amulet | 2007-01-11 15:38 | お話